【スポーツを読む】第20回
きまたりょう『世界一わかりやすい筋肉のつながり図鑑』KADOKAWA(2023年)

身体は非常に複雑につくられている。自分で動かしているのだが、専門的に学ばなければ動く仕組みは分からない。そんな身体を動かす筋肉の働きを説明しているのが、本書である。「つながり図鑑」というだけあり、立体的に筋肉の連動を説明している。全編にわたって本書を分かりやすくしているのは、トレーナーである著者「きまたりょう」によるイラストである。
著者はストレッチトレーナーとして働き始めたころ、効果が見られないクライアントをきっかけに「全身のバランスを総合的に見なくてはならない」と気付き「筋肉だけに限らず骨、腱、靭帯、内臓、神経、血管など様々なものを包み支えている結合組織」である筋膜を意識することになったという。それが本書を貫く「つながり」の説明を支えている。誰が読んでも理解できる分かりやすさは、専門家にとっては「この本を見せながらクライアントに説明しやすい」という実践の書でもある。
高校時代にサッカー部だった私は、半月板損傷のリハビリで膝周りの筋肉を重点的にトレーニングして筋肉に興味を持つようになった。そして興味を持ったことでかえって自分の知識のなさを痛感して本書を手に取った。それぞれの筋肉をどのように使い、どう鍛えるのかなど、これまで全く知らなかったことが分かるようになった。
現代は医療が発達し、怪我へのサポートが手厚い。しかし最善の策は故障をしないことである。本書を読めば、筋肉を知ることで怪我を予防し、日ごろの疲れさえコントロールできるようになることが分かる。
(江戸川大学マスコミ学科、野村春輝)